「病院で働き続けるのは体力的にきつい」「でも訪問看護は夜間対応があって迷う」「非医療サロンで独立という選択肢もあると聞いたけど、他とどう違うのか整理できていない」――そんな声を、看護師のキャリア相談の場でよく耳にするようになりました。
この記事では、いま看護師の間で「雇われない働き方」の選択肢として名前が挙がることが多い ①単発バイト・派遣(フリーランス看護師)/②訪問看護ステーション(自ら開設)/③非医療サロンオーナー の3ルートを、収入の作り方・向いている人・準備の重さの3軸で比較します。「独立か、転職か」を検討している看護師の方が、自分に合うルートを絞り込むための地図として使ってください。
※本記事は看護師のキャリア選択に関する一般的な情報整理です。特定の働き方を推奨するものではなく、開業や独立の可否・条件は個別の状況・地域・時期により異なります。開業手続き・税務・労務については所轄行政機関や社会保険労務士・税理士等の専門家に必ず確認してください。
▶ あわせて読む:看護師サロン開業の総費用 / 潜在看護師が非医療サロンで復職を選ぶ3つの背景
1. 「雇われない看護師」という働き方が注目されている背景
まず、なぜここ数年「雇われない看護師」というキーワードが広がっているのか、事実ベースで整理します。断言できる数字と、そうでないもの(推測)を分けて記載します。
1-1. 病院看護職員の離職率は例年10%前後
日本看護協会の「2024年 病院看護実態調査」によれば、2023年度の正規雇用看護職員の離職率は11.3%、既卒採用者の離職率は16.1%です。急激な上昇ではありませんが、10人に1人が毎年職場を変えている水準が続いています。
1-2. 訪問看護ステーション数は13年で約3倍
全国訪問看護事業協会の「令和6年度 訪問看護ステーション基礎調査」では、稼働している指定訪問看護ステーション数は17,329か所(令和6年4月1日時点/稼働数ベース)。2010年時点の約3倍にまで増えています。在宅医療需要の拡大とあわせて、「病院以外で働く看護師」の受け皿が急速に広がってきたことを示す数字です。
1-3. 「雇われない看護師」が話題にのぼる背景(推測を含む)
ここから先は公表データによる断定ではなく、キャリア相談現場・SNS発信・スクール入学理由の傾向として一般に語られている背景です。
- 働く時間と収入をセットで設計したい:夜勤や休日出勤の負荷を減らしたい/子育て・介護と両立させたい、という声が中堅世代(30〜40代)を中心に増えていると言われています。
- 「病院内での昇給・昇格」だけがキャリアではないと考える人が増えた:SNSで独立看護師や非医療サロンオーナーの事例が可視化され、選択肢として意識されやすくなりました。
- 副業・複業を認める職場が徐々に増えた:政府の「モデル就業規則」で副業容認が明記されたこと(2018年改定)を境に、企業・医療法人でも副業ルールの整備が進んでいます。
ただしいずれも「明確な統計に基づく断言」ではなく、業界の議論として広がっているトレンドとしてとらえてください。
2. 「雇われない看護師」の主要3ルート俯瞰
雇われない働き方はいくつかありますが、いま看護師の間で相談の多い3つを整理します(図1:3ルート俯瞰マップ)。

- ルート①:単発バイト・派遣(フリーランス看護師)
看護師資格を活かして単発案件を請け負う。準備が最も軽く、収入は稼働時間に比例。 - ルート②:訪問看護ステーション(自ら開設)
指定訪問看護事業所を自分で立ち上げる。開設要件・人員基準・法人格が必要で、準備は3ルートで最も重い。 - ルート③:非医療サロンオーナー
看護師の身体・皮膚知識を活かしつつ、医療行為を含まないエステティックサロンを運営する。医師連携は必須ではなく、開業ハードルは中程度。
いずれも「病院に雇用されない」という点は共通ですが、事業リスク・準備時間・収入モデルはまったく違います。次章以降で1つずつ整理していきます。
3. ルート①:単発バイト・派遣(フリーランス看護師)
3-1. どんな働き方か
医療機関・検診・イベント救護・ワクチン接種会場などの単発案件を、看護師派遣会社・スポットワークサービス経由で受注する働き方です。1日〜数日単位で契約するため、勤務曜日を自分で選びやすい点が特徴です。
3-2. 収入の作り方
時給・日給ベースで、稼働した分だけ収入になる完全変動型です。案件単価は地域・業務内容によって幅があるため、ここでは具体的な単価目安は掲載しません(医療系派遣会社の登録ページ等で最新相場を確認してください)。
3-3. 準備と留意点
- 派遣会社への登録/個人事業主として業務委託契約を結ぶ。
- 健康保険・年金は国民健康保険・国民年金への切り替えが必要(企業・法人所属時と比べて自己負担が上がるケースが多い)。
- 収入が変動するため、家計の固定費と最低月収の目安を先に決めておく。
- 看護師派遣は労働者派遣法上、原則として医療機関等への派遣が制限されている業務があります。就業先の業態を必ず契約前に確認してください(詳細は厚生労働省 労働者派遣事業ページを参照)。
3-4. 向いている人
- 臨床スキルを維持しながら、まず「雇われない働き方」を試したい人。
- 本業と並行して段階的に独立したい人。
- 子育て・介護と両立するため、勤務曜日を柔軟にしたい人。
個人事業主として働くうえでの基本知識は、個人事業主で起業するメリットの記事も参考にしてください。
4. ルート②:訪問看護ステーション(自ら開設)
4-1. どんな働き方か
指定訪問看護ステーションを自ら開設し、利用者の自宅・施設に訪問して看護を提供します。医療保険・介護保険の指定を受けるため、開設要件と人員基準を満たす必要があります。
4-2. 収入の作り方
医療保険・介護保険の報酬(看護療養費・訪問看護費)が主な収入源です。訪問回数と利用者数、加算算定の有無で経営が変動する報酬型モデルとなります。
4-3. 準備と留意点
- 法人格の取得(株式会社・合同会社・NPO法人など)。
- 常勤換算2.5人以上の看護職員配置(保健師・看護師・准看護師)と管理者要件(原則、保健師または看護師)。
- 事務所要件・運営規程整備・都道府県指定申請。
- 電子カルテ・スケジュール管理システムの導入。
- 24時間対応加算を算定する場合はオンコール体制の構築が必要。
詳細は厚生労働省 訪問看護および所轄都道府県のホームページを必ず確認してください。
4-4. 向いている人
- 在宅医療・終末期ケアなど臨床の延長線上でキャリアを深めたい人。
- 数名の看護師を雇用してチーム運営できる人(管理業務の比重が大きい)。
- 公的保険制度の枠内で安定した収入源を確保したい人。
5. ルート③:非医療サロンオーナー
5-1. どんな働き方か
看護師の身体・皮膚知識を活かしながら、医療行為を含まないエステティックサロンを運営する働き方です。医療機関ではないため医師連携は必須ではなく、開業自体は保健所の営業許可も不要です(ただし後述の広告・呼称ルールは厳守が必要)。
CL.hubが扱う「クリニカルマシン」は、この非医療サロンで使える業務用美容機器の総称です。医療機器ではないため医師連携なしで運用でき、看護師の知識と親和性が高い機器として近年注目されています。
5-2. 収入の作り方
自費メニュー(施術料)と店販商品(ホームケア品)が2大収入源です。1人サロンの場合、稼働時間×客単価×来店頻度の掛け算で月商が決まります。準備期間は物件と機材次第で3〜6ヶ月が一つの目安。詳しくは看護師サロン開業の総費用を参照してください。
5-3. 準備と留意点
- 個人事業主開業届(法人化は任意)。
- 物件契約(自宅サロン・マンションの一室・テナントの3タイプ)。
- クリニカルマシン・什器・消耗品の初期投資。
- 広告表現は薬機法・景品表示法の範囲に厳守(効果断定・体験談型訴求・医療行為の暗示はいずれもNG)。
- 「看護師」と名乗って医療類似効果を訴求すると医師法・保助看法上の問題になる恐れがあります。医療行為との線引きを慎重に確認してください。
5-4. 向いている人
- 臨床の負荷から離れつつ、看護師知識を美容分野で活かしたい人。
- 1人〜少人数運営で、自分のペースで働きたい人。
- 集客・接客・経営を自分で設計することに前向きな人。
「非医療サロンオーナーという選択肢」の詳細な背景は、潜在看護師が非医療サロンで復職を選ぶ3つの背景もあわせて読むと理解が深まります。
6. 3ルート5軸比較(早見表)

| 比較軸 | ①単発バイト | ②訪問看護 | ③非医療サロン |
|---|---|---|---|
| 準備期間 | 数週間 | 6〜12ヶ月 | 3〜6ヶ月 |
| 初期投資 | ほぼゼロ | 数百万円〜 | 数十〜数百万円 |
| 収入モデル | 時給×稼働 | 公的保険報酬 | 自費+店販 |
| スケール性 | 個人稼働に依存 | 雇用・拠点展開が中心 | 1人〜多店舗まで幅広い |
| 医療行為の関与 | 案件内容による | あり(保険診療) | なし(医療行為NG) |
比較表の数字は代表的な目安であり、実際は物件・地域・機材構成・チーム規模によって大きく変動します。「準備期間」「初期投資」は各都道府県・自治体の要件および物件条件によって上下するため、必ず個別に見積もってください。
7. 選ぶ前に整理したい5つの視点
3ルートは「どれが正解」ではなく、「自分の生活・キャリア設計にどれが合うか」の話です。相談の場で必ず整理してもらう5つの視点を挙げます(図3)。

- 生活の固定費と最低月収:稼働ゼロでも払い続けるお金(家賃・保険・生活費)を把握しているか。
- 資金余力と借入許容度:初期投資に耐えられる自己資金と、公庫融資などの借入をどこまで許容できるか。
- 臨床継続の意欲:手技や医療知識を「使い続けたい」のか、「別分野に軸足を移したい」のか。
- 働く時間帯・稼働日数の理想:夜勤やオンコール受け入れの可否、家族との時間配分。
- 集客・接客・経営の学習意欲:営業・集客・経理・広告を「自分で学ぶ」ことに前向きか、それとも組織所属の方が力を発揮できるか。
この5視点で自分の答えを紙に書き出すだけで、3ルートのうち向いていないものが1〜2つ消えるはずです。そこから絞り込んでいくのが実務的です。
非医療サロンを選ぶ場合は、開業前にターゲット設計を先に行うと後の集客がぶれません。看護師サロンのターゲット設計を参考にしてください。
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9. FAQ|よくある質問
Q1. 「雇われない看護師」に挑戦する前に、病院を辞めるべきですか?
すぐに辞める必要はありません。多くの人は在職中に副業・複業として単発バイトを試したり、休日にサロン準備を進めたりしています。まずは職場の副業規程を確認し、認められる範囲で小さく始めるのが安全です。
Q2. 単発バイトから訪問看護や非医療サロンに移行することは可能ですか?
可能です。単発バイトで「雇われない働き方」の生活リズムに慣れてから、次のステップを検討する人は少なくありません。ただし訪問看護ステーション開設・非医療サロン開業とも、準備期間と資金が別途必要になる点は理解しておいてください。
Q3. 非医療サロンで扱う「クリニカルマシン」は医師の指示や連携が必要ですか?
クリニカルマシンは非医療機器のため、医師の指示や連携は不要です。医療行為(表皮を超えて生体反応を起こす行為、注入・切開・レーザーによる医療目的の照射など)は行えません。効果の断定・体験談型訴求も広告表現としてNGです。広告表現ルールを遵守してください。
Q4. 3ルートを並行してやることはできますか?
制度的には可能ですが、時間配分の面で現実的なのは「本業+どれか1ルート」の組み合わせまで、というのが実務感覚です。複業でサロンを持つ選択については副業サロンはあり?なし?もあわせて参照してください。
Q5. どのルートが一番稼げますか?
「一番稼げるルート」は個人の稼働時間・立地・技術・営業力に左右されるため、一律には言えません。3ルートともトップ層と平均層で収入差が大きく、公表データも限定的です。稼ぐことを最優先するなら、まずは第7章の5視点で「自分がどこで再現性を出せるか」を整理することが先決です。
まとめ
「雇われない看護師」は3つの主要ルート(単発バイト・訪問看護・非医療サロン)に整理でき、それぞれ準備の重さ・収入モデル・向いている人が違います。トレンドや周囲の事例に流されるのではなく、自分の生活固定費・臨床継続意欲・学習意欲の3つを軸に選ぶことで、後悔しにくいルート選定ができます。
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